
日記の間があいたのでおわかりのように、ひーひー言いながら仕事してます。と言っても明けても暮れても学生の書いた英語の添削。あー、もう英語見るのもいや!
となると、つい逃避したくなるのが人の性で、今もDesperate Iconsのフォト・ギャラリーをすべて移動し終えたところ。このギャラリー、とにかく非常識にバカでかいので、これまではひとつのサイトに置けずにあっちこっちに間借りしていたのだが、ホストのsound.jpがウェブ容量を20メガバイトから300メガに一気に増やしてくれたので、やっとDesperate
IconsはDesperate Iconsで独立させることができた。おかげでトップに広告が入ることになっちゃったけど、300メガあるならなんだってがまんする! (元はこの種の広告が――ページ・レイアウトが狂うので――すごいいやで、それがないところを捜したんだけど)
おかげでこのサイトもだいぶ余裕ができたので、これからは日記に写真を入れたり、バックナンバーをもっと増やしたりできるかも。
しかし見ていて思ったが、よくやったよなー。単なるフォト・ギャラリーだけでこのページ数と文章量と写真の量(それを集めるための苦労は言わずもがな)。インターネットを始めたばかりで熱くなってた(Mansunに熱くなってたことは言わずもがな)ころだからできたことだよなあ。
なぜかサイト運営に関してだけはワーカホリックである私としては、時間さえあれば、次は『シムじまん』の大改造に取りかかりたいと思っているのだが。いや、あれも人に見てもらうに値するサイトに育ったと思うので、やっぱり外国の人にも見てもらえるように英語版を作ろうかと。あの膨大な文章を全部英訳するのかよ、ひえー! と、自分で言って気が遠くなっているが。
それを言ったら、この日記だって膨大な量になるんだが、まあ、こんなのはちょろいもんです。〈とか言いながら仕事サボってるじゃないかー!〉 仕事で疲れてるので、今日はちょっと文章ヘロヘロだけど勘弁してください。
というところで、ごひいきのStarsailorの新譜が届いたので、今日は久しぶりのまじめなレコード評。
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| さっそく最新の写真載せちゃお。左端がシンガーでギタリストのJames。とりあえず他3名はルックス的には無視するように。 |
私がStarsailorを知ったのは、商品としてだった。NMEでベスト新人に選ばれたとかの噂は聞いていたので、いちおう仕入れるだけは仕入れておこうと、デビュー作“Love
Is Here”の日本盤を入れたのだが、それは即売れたので、もう1枚買って試聴してみて、わわわ!となったので、それは即引っ込めて自分のものにしたし(笑)、同時にコレクションも開始した。
当時のStarsailorは「ノーザン・ソウルの新星」として紹介されていて、なるほどこのディープな暗さは「北のソウル」の名にふさわしいと思ったし、私もずっとそういうバンドだと思っていた。
どこがいいかって、やっぱり「本物の歌」がうたえる人だったから。やっぱりバンドは歌っすよ。歌に始まり歌に帰ってくるっていうかね。その点、ここのシンガーJames
Walshは本当の歌心と歌の才能を持った人。歌うべきものを持って生まれてきた人と、「とりあえず」歌ってるだけのシンガーとの差は一目瞭然だ。
おまけにいらない曲がない。とりわけ、“Poor Misguided Fool”や“Alcoholic”の、一度聴いたら耳について離れない、切なくやるせない悲痛な泣き節にじーんとした。まこと芳醇なブランデーの味わいにも似て、〈飲めないくせに〉、甘くほろ苦く、気品と風格と濃厚なうまみとこくのあるアルバムだった。
ただ、ご存じのように私はいくつになっても筋金入りの「ロック少女」なので、バラードとか、アコースティックとか、フォークとかブルースとかソウルとか、そのたぐいのものは基本的に受け付けない。(ダンスものだけは例外) なのに、泥臭くて暗くて地味な渋いバラッディアだと思っていたStarsailorになんでこんなに入れ込んだのか自分でも不思議だった。その謎が解けたのは2003年(セカンド・アルバムのツアー)の来日公演を見たときだったのだが、それはここに書いた通り。
とか言って、もう消しちゃったか。えーと、簡単に言うと、レコードからは想像もつかないほど、パワフルでヘヴィで「ロック」なライブだったんです。タイプとしてはSpiritualizedみたいな感じ。(と言っても私は最近ぜんぜんライブ行ってないし、今はどうなってるのか知らないけど、昔見た印象で言うと) とにかく音がドラマチックで重くて厚くて、わーっと持ってかれる感じなのだ。〈さっぱりわからん形容〉 Spiritualizedを思い出したのは、シンガーでギタリストのJames
WalshがJason Pierceによく似てるからかもしれない。(もちろんこっちのほうがずっと若くてハンサムだが)
そうそう、‘Wall of Sound’のPhil Spectorがこのバンドに興味を示してプロデュースを買って出たというのも、あの音を聴くとよくわかる。文字通りの厚い音の壁がぐわーっと迫ってくる感じ。
とにかくそれを見て、ますます「これは大物」という確信を深めたのだが、そうなると不満は「どうしてレコードでもライブみたいにやってくれないの?」ということだよね。いや、あれはあれでしみじみいいのだが、私みたいな誤解をする人が多いんじゃないかと思って。
私が見たのはセカンドのライブで、このセカンドについてはここに書いた通り、もちろん傑作だったのだが、むしろアルバムとしてはファーストよりシンプルで地味な印象だった。それがライブだとあれだけのど迫力だからね。どうなってるの?
ただセカンドでちょっと「おやっ?」と思ったのは、シングルにもなった“Four
to the Floor”を聴いたとき。メンバーいわく「ディスコ」だそうだが(違うだろー)、これまでなかった粘りのあるグルーヴが印象的なナンバーで、私もこれがアルバム中いちばん好きだった。それで、今後はこの路線で行ってくれるといいなーと思っていたのだが‥‥
で、これはStarsailorの3枚目のアルバム。べつに関心のない人にとってはけっこういっぱい出してるように見えるかもしれないが、2年に1枚ずつだから、ファンとしてはすごく待たされた気分。なんかこのペースが今は一般的で、昔みたいに毎年アルバム出すアーティストなんていなくなっちゃったなー。いたら私は破産するけど。
ところで、このDVD付き限定盤、初めてCD Wow!で注文したのだが、11ポンドで日本への送料無料! 2300円足らずで、はたして高いのか安いのかわからないが、たぶんすごーく安いと思う。eBayセラーですら送料5ポンドぐらい請求するんだから。そのからくりは届いてみてわかった。香港からの発送なのだ。と言っても、もちろんEU盤。確かイギリスじゃ通常のCDがついこないだまで3000円ぐらいしてたんだが、これじゃ普通のCD屋はつぶれるわなー。
実は私も海外から輸入したCDを日本で売ったらどうかと考えたことは何度もあるんだが、昔は本国のほうが高いという変な理由で、今はこういう店があるので、どっちにしろ新品を輸入してもなんのメリットもない。
ただ、ここはCDとDVDしか扱ってくれないんだよねえ。LPはHMVには入ってたが高いので、レコファンに入るのを祈ろう。ちなみにちゃんと来るかどうか危ぶんでいたDepeche
Modeの限定盤とIan Brownの限定盤もちゃんと届きました。どっちも3500円ぐらいして高かったけど、Depeche
ModeはeBayでも同じぐらいしていたし、Ian Brownは日本じゃ5000円で売っていたからまだ安い。とか言いつつ、自分の商品は売れないのに買ってばっかりでどうするんだよー! あ、限定買ったらもうレギュラー盤はいらないつもりだったけど、色違いなのか。やっぱりこれは通常盤も買わなくちゃ! とか言ってますます散財するようにできているのだが。
話を音楽に戻して、最初に聴いたのは先行シングル“In the Crossfire”だった。ピアノだけの伴奏で静かに始まるところはいつも通りだが、ギターとリズムが入ってからはやけに力が入っているというのが第一印象。Jamesは力いっぱいシャウトしてるし(もともとこの人は力いっぱい歌える人だったし、そこも好きだったんだけど)、ギターもやけにラウドだし、「あれれ?」とは思ったが、Starsailorとしては曲がいまいちだなと思っていた。しかし、こういう「大人のバンド」はアルバム・アーティストなので、シングルだけで判断することはできないのだ。
そこでさっそくアルバムをかける。1曲目は“In the Crossfire”だが、2曲目“Counterfeit
Life”のイントロを聴いただけで、飛び上がって「これだ!!!」と叫んだ。なにしろベースがブンブンうなっているし、リズムがスイングしている。このうねるような怒濤のグルーヴ感! これがライブのStarsailorの醍醐味だったのだ。しかも、曲はいつもながらにポップだし(セカンド・シングルは決まったようなもんだね)、シャウトもかっこいいが切ない歌メロも健在だし、ギターもラウドだけど泣いてるし、ドラマチックに盛り上がるし、もう何もかも手放しでいいっ!
あー、なんか興奮しすぎで書いてるだけで疲れる。実は以下の曲もすべて同文なので省略。と言いたいが、ライブで合唱したらどんなにか気持ちいいだろうと思わせるサビがかっこいい“Faith,
Hope and Love”とか、流れるように流麗なメロディが魅力の“Way Back Home”とか、どの曲も全部しびれるほどすてき。
しかし、どの曲も華々しく盛り上がるロック・ナンバーで、お得意のバラードが1曲もないなと驚いていたが、最後の2曲がそうだった。しかし“White
Light”はやはりサビが派手だし、バラードらしいアコースティック・バラードはラストの“Jeremiah”だけ。ずっと力で押してきて、ふっと静かに終わるという演出もかっこいい。
とにかくロックしているのだ。骨太で力強く豪快で、しかも繊細で泣かせて美しい。詞もあいかわらずディープだ。(ぜんぜん意味わからんけど、でも妙に胸に迫る) これまでは「胸にじわーんとくる」バンドだったのだが、「腹の底からずしーんとくる」音に変わった。完璧じゃん! 私はこれが聴きたかったんだ(涙)。
しかし、こうやって聴くと、私の他のお気に入りバンド――ManicsやThe Musicとそれほど違うわけでもないな。その代わり、新しさはまるでない。でも文句あるか! これぞ英国ロックの王道と言わずしてなんだろう。
しかし、なんでまたいきなりここまで変わったんだ? ライブじゃ前からやってたわけだが。そこで聴き終えたあと、おまけについていたDVDのメイキング・インタビューで、ベースの人(まだJames以外の名前を覚えていない)が「今回はライブっぽい音にしたかった」のを聞いて心の底からうなづく。
「ライブっぽい音」というのは、えてして「ラフで雑な作り」の言い訳のことが多いが、Starsailorは違う。もともとライブのほうがゴージャスでアグレッシブだったんだから。あー、セカンドでもあれだけすばらしかったんだから、これをライブで聴く日が待ちきれないよ。(実はDVDにはそのライブも入っているのだが、それがまた涙が出るほどいい)
そこで、「どこがどう変わったんだろう?」と思って、前の2枚を聴き返してみたのだが、この萌芽みたいなものは前々からあったということがわかった。私の不覚でした。でもそれを聴き取ったからここまで熱中したんだとも言えるな。しかし、なんでこれを「泥臭いバラッディアー」なんて思ったんだろう?と今にしてみると不思議なぐらい。
ひとつ言えるのは、リズムの大幅な改善。やっぱりこれが「バンド」の強みだよねー。ギタリストでシンガーだから、当然曲のほとんどはJamesが書いてるんだろうし、私もこれまではJamesのワンマンバンドみたいに思っていた。でもシンガー=ソングライターとバンドの違いは、1+1が2以上になることなのだ。
リズム・コンビについては初期のリビューでは「わりと下手」みたいなこと書いてるのもあったが、私の見たライブではそんなのぜんぜん感じなかったし、今にしてみるとなんでそんなこと言われたのかわからないぐらいうまいし、だいいちリズムがおもしろい。やっぱりうまくなったんだろうな。
私は昔からキーボードの入ったロックバンドが好きなので、キーボードの人は元から好きだった。特にピアノ。それもKeaneみたいにコロコロと美しく鳴るだけじゃなくて、この人はピアノに力があるよね。ちょっと古めかしい感じのするハモンド風シンセもいい。何より、音の分厚さはキーボードがいるおかげだし。
Jamesのギターの腕も確実に上がっている。とにかく彼は歌に耳を奪われて、ギターは二の次に思っていたが、アコギをつま弾いてという印象が強かったギタリストなので、エレキもこれだけ弾けるとは(ライブを見るまで)知りませんでした。
あえて言うなら、彼のミッキーマウス・ボイス(かん高いハスキー・ボイス)はなじめない人はどうしてもなじめないだろうな。(Placeboほどは耳障りじゃないが) 実は私も最初は多少抵抗を感じたのだが、今はこの声じゃないとだめというところまで惚れ込んでしまった。
とにかく3枚目にして、実力完全開花。遅咲きなところ(まあ、新人賞もらうぐらいだから、もともと評価は高かったんだが)もいかにもStarsailorらしい。私の評価もA級から超A級に格上げ。間違いなく、一生つき合うことになるバンドだ。Coldplayあたりとスタンスは非常に近いのだが、Coldplayの100倍いい。まして○○や××(故あって伏せ字)の100万倍いい。なのに、なんでColdplayほど売れない!
まったく、いい加減な新人のCD買うぐらいなら、これを買って家に置いといてほしい。今は好きになれなくても、あなたが将来大人になれば(笑)、きっと心の底からいいと思うようになるアルバムだから。
あれだけハンサムなのに、James Walshはハリウッド女優と結婚したり、スーパーモデルと浮き名を流したりはしない。(誰かさんたちに対するイヤミ) それどころか奥さんとの間に第一子誕生でますます落ち着いて大人になったらしい。(これ以上成熟してどうするんだよっていう気もするが) でもこの人たちこそ英国音楽の良心である。
実は彼らの現役時(長ーい休止期に入る前)、私はStone Rosesが嫌いだった(笑)。理由は単に例のあまのじゃくで、なんであれ一番人気が嫌いなだけ。とにかくすごい人気だったんだから。まさに国民的アイドルって感じで、女の子はキャーキャー言うし、今のOasisなんか目じゃない人気。
もっともJohn Squireのことは尊敬していた。なにしろギタリストなのにすべての曲を書き、ジャケットを描き、おまけにハンサムだったから(笑)。私は多芸な人を尊敬するのだ。(ハンサムは言わずもがな)
それにくらべて、シンガーのIan Brownのことはずっとバカにしていた。声ならライバルだったCharlatansのTim
Burgessのほうがずっとかわいかったし、曲もCharlatansのほうがずっとステキだったし、まして花のように愛らしい美少年Timに対して、こっちはサルだから(笑)。言動もサル並みだったし。
そんな私がStone Rosesに一目置くようになったのは“Second Coming”が出てからだったのだが、バンドが解散してソロになったときも、当然、成功するとしたらJohnのほうだと思っていた。だって、やっぱりStone
Rosesが成功したのはあの曲のおかげで、それはすべてJohnが書いてたんだからねえ。いくら歌が歌えても、かんじんの曲が書けないんじゃどうしようもないでしょ、って感じで。
それで、ファースト・ソロ“Unfinished Monkey Business”が出たわけだが、これがかなりダンス音楽寄りだったのは意外だった。まあ、Stone Rosesも(サル踊りだけど)立派に踊れる音楽だったからそれほど不思議でもないんだけど。でもこの時点ではまだバカにしていて、「なるほど、歌の下手さや曲作りの才能のなさをごまかすにはダンスに逃げるのは得策だな」なんて思っていた。
そんな私のIan Brown観が決定的に変わったのは、ゲスト参加したUNKLEの“Be
There”を聴いたとき。他人のアルバムだから、どこまで彼の力かとは思ったけど、作詞作曲にはDJ
Shadowと並んでIanの名前がクレジットされているから少なくとも歌メロと歌詞は彼が書いてるんだろう。それでこの曲がもう、死にたくなるぐらい美しい名曲で、私の生涯のオールタイム・ベスト・トラックに入るのは確実というしろものなのだ。
もちろんそれはそれほど驚くことはない。もう口が酸っぱくなるほど言ってるように、UNKLEというのは当代随一のソングライター=プロデューサー・チームだから、彼らの曲がいいのはあたりまえ。問題は歌である。
この歌を聴いたときの私のショックを比喩的に言わせてもらえば、あたかもDJ
ShadowとJames Lavelleがみじめな醜いお猿のIanにパラパラと魔法の粉をふりかけたら、あっという間に麗しい王子様に(爆笑)というぐらいの衝撃だった。いや、冗談ではない。それぐらいここでの彼の歌はキラキラと輝いていた。
で、理由を考えた。いちばん違いを感じるのは声だ。もともと彼の歌が嫌いだったのは、上にも書いたTim
Burgessあたりとくらべると、声が決定的に悪いと思っていたからなのだ。確かにTimと同タイプの「かわいい系」の声(現在のRichard
Fileをはじめ、UNKLEに入ってるシンガーも全員その系統であることを考えてもわかる)なのだが、なんか声質がモゴモゴしてて、おまけにマンチェスター特有の(と、言い切っていいだろう。OasisやNew
Orderもそうだし)無気力で投げやりな歌い方なので、よけい印象がぼやける。
私は歌が第一、それも、すぐれたシンガーは声だけでも人をはっとさせるものを持ってなくてはいけないと考えるので、これはシンガーとしては大きなマイナスだと思っていた。
ところが、ここでのIanの声! この人がこんないい声の持ち主だなんて思ってもみなかった。もちろん、持って生まれた声がそう変わるはずもないので、やっぱりその「音」を引き出したJames
Lavelleの功績なんですけどね。まちがいなく、Ianの「声」をこれだけビビッドに浮き上がらせたのはUNKLEが初めてだった。
こうやって聴いてみると、たしかにあまり美声ではない。舌足らずで甘いハスキー・ボイス。ところが、これまで「モゴモゴ」と感じていた部分がなんとも味わいのある、底知れない深みを思わせる。それとこの不思議な透明感。決してクリアな声ではないので、底まで透き通ってはいないんだけど、やはりそこがかえって謎めいた深みを感じさせる。声に優しさや暖かみがあるのもすばらしい。
本当に魔法でもかけられたとしか思えない。この時点で、嫌っていたIanはいきなり私の「現役No.1シンガー」に祭り上げられてしまったのである。これはちょっと言い過ぎかな。ManicsのJamesやPuressenceのJamesもいるし。でもあえて言うなら、あの人たちはどっちもシャウト系のシンガーなのに、「ささやき系」としてはNo.1と言ってもいいよ、マジで。同傾向のシンガーが集まったUNKLEのアルバムで聴いても、歌は彼がいちばんいいし。
で、この魔法はこれ以後も消えず、ソロアルバムでもはっきり聞き取れるようになったが、それでもUNKLEにくらべちゃうと曲がいまいちだなーとは思っていたが、再び「ええーっ!」と言わされたのが、サード・アルバム(だったか?)に入っていた“F.E.A.R.”を聴いたとき。ある意味、こっちのほうがもっとびっくり。というのも、これは曲の良さ、メロディの良さもさることながら、いちばん感心させられたのは歌詞だったから。芸は本能でできるかもしれないけど、脳みそが必要な歌詞はサルには無理だと思ってたから(笑)。だから、“Dolphins
Were Monkeys”みたいなアホンダラな歌詞なら書けるかもしれないけど。
以前も書いたが、この歌詞、すべての行がF.E.A.R.の頭韻を踏んで、しかもちゃんと考えさせられる内容になってるんですよね。これはサルにできるわざじゃないぜ。ていうか、実は詩才も以前から見せてたんですけどね。“Dolphins
Were Monkeys”だって、なかなか普通の人にできる発想じゃないし。
というわけで、晴れて人間に格上げ(笑)、どころか「大天才!」の形容詞が付いてしまった。その後もその期待に違わぬ活躍で、もはや私のメイン・アーティストのひとりに。
ダンス音楽との幸運な出会いもあるだろう。この種のシンガーがこれほどダンス・ミュージックと相性がいいとは、UNKLEを聴くまで思ってもみなかった。その意味でもUNKLEによって才能が開花したと言えるので、James
Lavelleには足を向けて眠れまい。
それに引きかえ、私が期待したJohn Squireのほうは‥‥というのはもう言ってもむだだし、本人はあれがいい音楽だと思ってるんだろうから何も言わないけど。しかしつくづくギタリストはソロになってはだめというのを実感させられますね。
おっと、この「コレクターズ・エディション」の話もしておかなくては。最近はやりのDVD付きじゃなくて、CD2枚組だったので、ちょっとがっかりしたが、このボーナスCDはなんとしてもゲットしなくてはと思って買った。だって、ダンス音楽はリミックス命ですからね。もちろん私はすべてシングルで持ってるが、いちいちかけ替えるのめんどくさいし(笑)。
手にとってうれしかったのは、単なる2枚組じゃなくて、DVDサイズのハードカバーの本型になった凝った作りのCDだったこと。なるほどUNKLE方式ですな。なんか、なんでもまねしてない? まあサルだからしょうがないか(笑)。
本の部分は写真集になっていて、かわいい(と見えてきてしまった)おサルさんの写真やグッズのたぐいがいっぱい見れる。そういや、この人、“Harry
Potter”にも出演したんだっけ。これも見なくちゃな。
ボーナスCDのほうはなにしろ持ってるんで何も言うことはないが、シングル持ってない人にとってはMichael
Jacksonのカバー2曲“Thriller”と“Billy Jean”が聴けるのが魅力かも。どっちも完全なIan
Brown節になっているので、サビになるまで原曲がわからない。Michael Jacksonというのはものすごく歌のうまい人なので、そのカバーを歌うと音痴がバレるが、その脱力したユルいところがかえって魅力。
えっ、Gus Gusと共演なんてしてたの? 知らなかった。これは捜さなくちゃ。
結論としては、マンチェスター者をバカにしてはいけないのだった。サルだのいい加減だの音痴だの、バカにするようなことばかり書いてると思われるかもしれないが、それでも音楽都市としてはつねにマンチェスターこそNo.1と言っているのは、この連中は神様からある種の才能を賦与されていて、音楽一筋のまじめな努力型のミュージシャン(Starsailorがその典型だわね)には何年かかってもできない、もしくは非常な努力を必要とする離れ業(主としてすばらしいメロディを書くということ)を、ヘラヘラしながらなんの苦もなくできてしまうからだ。
ところで、私はStarsailorにもダンス・ミックスを作ってほしいと思ってるんだけど。あれこそ相性悪いと思われるかもしれないが、実はファースト(だったか?)のB面にダンス・ミックスが入っていてそれがものすごくかっこよかったのだ。やはり元歌がよくできているとリミックスもいい。特にStarsailorのサードはリズムが凝ってるので、ぜひぜひUNKLEにリミックスしてほしいのだが。
仕事が重なり、久しぶりに睡眠不足で朦朧状態。そんな最中に、スペインのお客さんから今東京にいるのでうちに遊びに来たいというメール。ひええ! うちに直接買いに来たいというお客さんはけっこうたくさんいるのだが、たいてい日程が合わなかったりしてお流れになるので、気楽に「いいですよー」と言ってしまったのだ。
いや、お客さんはいつでも熱烈大歓迎なのだが、このところの忙しさで、家の中はゴミ箱をひっくり返したようなありさま(いつもだけど)。片づけたくても仕事が詰まっててそれどころじゃない。おまけに例のダイエー閉店騒ぎで溜め込んだ段ボールがいたるところに山になってるし。こんなところ、とても人(まして外国からのお客さん)には見せられない! でも不景気の現在、1枚でも買ってくれそうな人は大事にしたい。というわけで、ほんとに来るのかなーと戦々恐々。
よってこんなの書いてる暇はないので適当に片づけるが、最近続々買い物が届いている。〈だから貧乏になるんでしょ!〉 いや、別に高いものは何も買ってないんだけど。ほとんど聴いてる暇もないので、かいつまんで記すと、ずっと捜していたのに見つからなかったSmithsのデビュー・アルバムの初回盤(帯付き)をやっと見つける。Smithsの初回盤はいい値で売れるのだが これはもちろん自分のもの。SmithsはRough
Trade盤CDと国内初回盤CDをすべて揃えようと思っているのだが、これがなかなか至難の業。そんなに売れてなかったのかな? 確かCDの時代になってすぐにRough
Tradeが倒産したので(また復活したが)、英国盤が少ないのはともかく、国内盤を見つけるのに10年もかかるとは。
Southのニュー・シングル“Speed Up/Slow Down”。限定1000枚というので、まだもったいなくて開封できない(笑)。これはどこにも売ってなくて、しかたなく発売元のYoung
American Recordingsから直接買った。ところでこのアメリカのインディー・レーベル、ショッピングカートもないのでメールを書いて注文する、クレジットカードも使えなくてPayPalで払うというあたり、Strangelove
Records並みの営業規模!(さすがにホームページはプロメイドだが) なんか親近感がわいてしまう。ジャケットの印刷がかすれてて、まるでブートレッグみたいだし。ひたすら豪華だったMowax時代を思い出すにつけ、Southもここまで落ちたかのーという感じ。でも、おまけにOrange
Parkというバンドの(どうも所属バンドはこの2つしかないみたい)ポストカードとバッジを付けてくれた。しかし、こういうマイナー・インディーだと、プロモの入手がまた困難なんだよなー。
以前、eBayで「勝負アイテム」と書いたのは、Eyeless In Gazaのアルバム“Fabulous
Library”。このCDだけがどうしても見つからなくて、発売当初からどこの店へ聞いても品切れだったので、血眼で捜していたものだ。けっこう競ってたので、私は背水の陣でスナイプにかけたのだが、さすがにスナイプで競ってくる人は誰もいなかった。Eyeless
In Gazaについては何かにつけて書いてるし、詳しくはリビューに譲るが、ちょっと考えてたのと違ったなー。
今日ははるばるスペインからのお客様、Sergioが来訪。なかなかないことなので、3日前から朝6時に起きて、家の片づけと掃除とゴミ出し(っていうか、普段からやれよー)、お昼の軽食や飲み物も用意して、準備万端整えて待ってたのだが、嵐のように来て、嵐のように買って、嵐のように去っていく。しかもお金がたりないからと言って、一度上野のホテルまで戻って、また来るというあわただしさ。あー、疲れた(笑)。
でもすばらしいお客さんで、例によってのMowaxコレクターなのだが、まだ店に出してないものも含めて、ポンと4万円も買ってくれた。最近Mowaxが売れないと思っていたが、また在庫が空っぽになってしまった。売れるのはうれしいんだけど、売る商品がなくなってしまうのはやっぱりちょっと悲しい。
でもこれだけ売れるなら、やっぱり海外に店を出せば‥‥とつい思ってしまうが、それじゃかんじんの売り物がないもんなー。というのも、もちろんのこと私のコレクションを披露もしたのだが、これも持ってるあれも持ってるという感じで、やっぱり輸入盤は勝負にならない。だいたい、私と違ってお金持ちみたいだし(笑)。
しかし、できれば居酒屋にでも連れ出して、ゆっくり日本の感想やスペインの話を聞かせてもらおうと思ったのに、それは当てがはずれた。そもそも英語があまり堪能じゃなくて、私の話はわかるんだが、何か言おうとすると言葉が見つからなくて困ってるみたいだった。まあ、その辺はスマイルでカバーってわけで、あちらはいっぱいお宝抱えてニコニコ(おみやげまで持たせた)、私も商品が売れてニコニコで、いいお客さんだった。(実はまた来るんだけど)
おっと、ちなみにサングラスにポニーテールの、いかにもダンス・ミュージック・ファンという感じの、おしゃれでかっこいい人でした。
(いつもとちょっと調子が違うが、秋は物思う季節なので)
年を取ると時間のたつのが早く感じるというのは前にも書いたが、それについて、ぴったりの比喩を思いついた。ちょうど、低速度撮影のフィルムを見ているようなのだ。スローモーション映像の得られる高速度撮影と反対に、コマ落としのようにゆっくりシャッターを切る低速度撮影では、非常に動きの遅いものを目に見える速さにして見せてくれる。地面に落ちた種がむっくりと芽を出し、生き物のように(もちろん生きてるからだが)くねくねと動いて伸び上がり、花を咲かせる映像をご覧になったことがあるだろう。
咲いている花を見ても、人はただ花が咲いていると思うだけで、それがやがてしおれて枯れるところまでは想像しない。(桜のようにすぐに散ってしまう花は別だが) 同様に、子供にとって夏は永遠に夏であり、やがて来る冬のことなんか考えない。子供時代ほどではないが、高校生にとって、高校生活が永遠に続くように思える。だから高校生に将来の生活設計なんて訊いてもむだである。そんなことは想像もできないんだから。
ところが年を取ると、それが一気に加速して目に見えるものになるのだ。私はもう季節ごとにワードローブや寝具を入れ替えるのをやめてしまった。確かに押し入れの奥に入ったセーターはちょっと出しにくいが、どうせまたすぐ暑くなって半袖の出番になることを思うと、いちいち入れ替えるのが面倒になったからだ。暑くなったり、寒くなったりの春秋がまるで脈動するように感じられる。
同様に、20才の人は50才になった自分なんて想像もつかない。なのに50になると、(生きてれば)60才の自分、70才の自分、80才の自分がディテールまでありありと見えてしまう。
これって悲しむべきことなのかそうじゃないのかよくわからない。まあ、どっちみち有限の命の生き物で、どうせみんな死ぬんだから。これはもしかして死に備えるための天の配剤かも。永遠に生きると思っていたのにいきなり命を絶ち切られるよりは、終わりが見えた状態で死ぬ方があきらめもつくからね。子供や若い人の死が痛ましいのはそのせいもある。
ついでにふと思ったのだが、植物というのは動物にくらべ、異常にゆっくりした速度で生きてるわけで、(実際、木なんか千年も生きるし)、木の視点から人間を見たら、人間がハツカネズミを見るみたいな感じがするだろう。なんかちょこまか動き回って、あっという間に死んでしまうみたいな。うん、そんなもんだよな、とわけもわからず納得する。
ここ数日、めっきり寒くなった。それで私はそれを楽しみに待ち望んでいたのである。何がうれしいって、ベッドにもぐり込む喜びが倍増するから(笑)。
誰だったか有名人で、暖かいベッドが嫌いで、ホテルなんかでもつねに2台のベッドを用意させ、寝ているベッドが暖まると、わざわざそこから出て、冷たい方に移動するというのを習慣にしていた人がいたという話を聞いたことがあるが、私はその気持ちがちょっとわかるのだ。
寒くなったと言っても、うちあたりはまだ毛布(ふかふかのフェイク・ファー)1枚で十分。それでベッドに入ると、毛布もベッドも冷たくなっている。このひんやり・ぬるぬるとした感触がすごく気持ちいい。そこからじわーんと暖かさが広がっていく感じもすごく気持ちいい。暖かくなってしまうとあまり気持ちよくない。そこでごろんと寝返りを打つと、そっちの側のベッドはまだ冷たいので、またその冷たさを楽しむわけである。
寝ているベッドに猫がもぐり込んでくる感じにも似ている。(というか、この毛布は肌触りが猫の毛みたいなので気に入っている) 外から帰ってきた猫は当然毛皮がひんやり冷えているのだが、体をくっつけていると、その奥からぬくぬくしたぬくもりがじわーっと広がってくるあの感じ。
もっと寒くなると毛布をしまって羽布団に換えるのだが、羽布団というやつは絶対冷たくならないので、ベッドに入ったときからあったかいのが気に入らない。だから、なるたけやせ我慢をして毛布で過ごすことにしている。
そのひんやりを楽しむためには当然、寝巻きも薄手でなくてはならない。理想は裸だが、さすがにこの季節に裸で寝てはおなかが冷えて腹をこわすので(笑)、妥協して上は半袖Tシャツ1枚、パジャマのズボンもTシャツ程度に薄くて柔らかいのを苦労して捜して着ている。
しかし信じられないよね。私の子供時代の東京のボロ屋の寒さときたら、分厚い毛糸の靴下はいて、湯たんぽも入れて寝ないと足が冷たくて寝付けない、布団なんか厚いのを何枚重ねてかけても寒くて寒くて震えてたのに。今、湯たんぽなんか入れたらゆで上がってしまう。電気毛布なんて悪夢に等しい。
そうそう、地球温暖化の影響もあるかもしれないけど、年を取ると寒さに強く、暑さに弱くなるというのもあるかもしれない。年寄りというのは寒がりという固定観念があったので、こんなのは私だけかと思っていたが、年上の友達に訊いてみたら同じだと言い、しかも年取ったら冷え性が治ったというのでなるほどと思った。なんでなんだろう? 新陳代謝は衰えてくるはずなのに。確かに大学でも、冷房が効いた教室で私はノースリーブで涼しい顔しているのに、学生は膝掛けとかカーディガンとか着込んで年寄りじみた格好をしている(笑)。
そうそう、この楽しみを味わうには当然ながら独り寝でなくてはならない。私が長年つき合った男は私とは正反対に片時もひとりではいられない人で、おかげで寝るときもダブルベッドを使うことを余儀なくされたのだが、私はこれがいやでいやでしょうがなかった。(二人とも貧乏なころはシングルベッドに二人で寝ていたが、これはもう悪夢だった) しかし、彼と別れたときは、よく歌なんかにも歌われるし(笑)、独り寝は寂しいかもしれないと思ったが、寂しいどころかものすごい開放感を味わって、つくづく自分は独居性の動物なんだと思い知らされた。
でも同じ独居性の動物として、猫はいてもいい。年寄りになったらにゃんこと暮らすのが私の夢である。肌触りが冷たいという点では、爬虫類も好きなのだが、イグアナといっしょに寝たらトゲトゲが刺さって痛そうだし(笑)。ヘビならそういう心配はないが、ヘビと寝ている老女というのではほとんど(というか、完全)魔女である(笑)。
やっとこさ、という感じで、Paul(Draper。元Mansunとか書かないとみんな忘れてるかも!)の近況を知らせるメールが届く。日本語訳はDesperate Iconsのほうに書いておきましたが、ソロ・アルバム用の曲もポチポチ完成しつつあるようですね。
来春にはMansunのベスト・アルバムがリリースされて、その限定盤には全プロモを収録したDVDも付くと言う。当然だよ、当然。つーか、遅い!っての。全ライブを収録した5枚組DVDボックスセットぐらい出してくれなきゃいや! が、そういうのが出るかどうかはこのベストの売り上げにかかっているので、みんな買おう!
すでにリリースされた仕事としては、元Skunk AnansieのボーカリストSkinとのコラボレーション・シングルが(ダウンロード・オンリーだけど)発売されている。Paulは作曲・プロデュースをSkinと共同でやっているほか、ギターとベースを弾いてます。このビデオはSkinのオフィシャル・サイトで見られるんだけど、見ての感想は‥‥、あー、Skunk Anansieのほうが良かった。あーっ、また意地悪を書いてしまった! 意地悪じゃなくて事実だけど。Skinちゃん好きだったんだけどねえ。やーっぱりソロじゃ昔ほど精彩がないみたいな‥‥。
しかし、とりあえずPaulのソロには期待だ。大期待!しなくてなんになる? と、なんかもうヤケクソっぽいが(笑)。バンド解散後、これだけ長いブランクを経て出たソロが良かったためしがないというジンクスも、Paulなら破ってくれるはず。
いやー、日記の間隔が10日もあいてしまって、死んだんじゃないかと心配してる方もおられるでしょう。どうもすみません。なんかこの1週間ばかり、忙しいってほどは忙しくないんだけど、気ぜわしい週だったので。ほんとはまじめな(あまりまじめじゃないけど)リビューとかも書いてるんだけどね。推敲する暇がなくて。(こういうのは15分で書き飛ばしてるが、まともな批評はそれなりに案を練ったり推敲したりで、何日もかけて書いてるのです)
気ぜわしい原因のひとつは、12日に書いたスペイン人のSerge。とりあえず顔合わせはうまく行って、向こうも好感を抱いてくれたようだし、とてもお金持ちのすばらしいお客さん(笑)だということがわかったので、日本には1か月も滞在するというから、あとは1日ぐらい東京観光案内でもしてあげて、日本を発つ前にはご飯でもご馳走してあげようと思っていたのだ。
ただ、ちょっと気になったのは、彼から来るメール(どこにいても毎日のようにメールを送ってくる)がどうもグチっぽいのだ。主として、日本ではどこでも英語が通じないことをぼやいてるんだけど。すいません。それは私の責任です(苦笑)。私もいちおう英語教師ですから。でも、この夏、スペインを旅した私の友達は、どこへ行っても英語が通じなかったとグチってたけど(笑)。そもそも彼の英語もほめられたものじゃないし。
でも客をぼったくることしか考えてないような日本の観光地で、ぜんぜん言葉が通じない(し、もちろん書いてあることも読めない)というのは、相当心細いし、不便だし、不愉快だろうと思って心配していた。(私自身はそのせいで英語の通じる国しか行かない) せっかく高いお金使って日本まで来たのに、日本の良さを知らずに帰すのは忍びない。とにかく東京に戻ってきたらせいぜいフォローしてあげるつもりだった。べつにそれほどの義理はないんだけどね、なんか困ってる外人を見ると、民間親善大使みたいな気分になっちゃうのよね。
そんなこんなで彼は富士山に行って帰ってきたのだが、突然、「すごく困ったことになって誰かと話す必要がある。今夜行ってもいいか?」というメールが舞い込んだ。それも早稲田の授業がある火曜日に。私は火曜と木曜は大学の仕事で、一日家にいないと言ってあるのに。しかも、メールが来たのは出勤直前で、私は深夜まで帰らない。彼は私の電話番号を知ってるが、こちらはメールでしか連絡が取れない。だいたい、いったい何が起こったのか、かんじんなことが何も書いてないので、方策を考えることもできない。
それで一日ヤキモキしながら帰ってきて、家で待っていたのだが、彼は来ないしメールも電話も来ない。本当に心配になってきた。トラブルっていったいどんなんだろう? もしかしてなんかの犯罪に巻き込まれたとか? こうなると、心配と妄想ばかりが頭を駆けめぐる。すると翌日、「もう大丈夫。土曜日には(取り置きしてある商品を取りに)行くから」というメールが。なーんだ、心配させやがって。
と安心するのはまだ早かった(笑)。金曜日になってメールが来たので、開いてみたら、なんと、バルセロナに帰っているというではないか! 「会ってさよならを言うひまもなくてごめん」と言っているが、私は明日また会うつもりで準備してたのに。
予定では12月10日ごろまでいるはずだったのに、そんなにあわてて離日するような、いったい何があったの? どうやら、ホテルで知り合った3人のコロンビア人との間に何かあって、帰るしかなかったというのだが、何の話かさっぱりわからない。「3人のコロンビア人」というのがなんかむっちゃ怪しげだが(笑)、そいつらと顔合わせたくなければ、べつにホテルを移ればいいだけじゃん!
つい、「どういうことなのかはっきり説明して!」と言いたくなったが、べつに私にそんなこと説明する義理は何もないわけだし、いやなことは彼も思い出したくないだろうし、とりあえず、日本で不愉快な思いをしたことに謝罪と慰めの言葉を送っておいた。すると、「東京はすばらしかったし、また必ず行くから」と言う。私だったら、そんな逃げ出すようないやなことがあったら、二度と行かないけどな。どうも何考えてるのかよくわからん。たぶん、英語がそんなにうまくないのでうまく説明できないだけなんだろうけど。これが英米人なら、まちがいなく私は山ほどのグチを聞かされているはず(笑)。
とりあえず、日本と私に対して好印象を持ってるんならいいけど、次の心配は彼のためにキープしてある大量の商品。お金はあとでいいから持って行けと言ったんだけど、「どうせまた来るから」と言って、置いていったもの。まさか逃げ帰るとは思わなかった(笑)ので、こうなると、キープしておいて正解だったというか。(実は信頼していたお客さんに何度か裏切られたことがあって、もう前払いでしか売らないことにしてるんだけど) いや、お金は払ってもらえそうですけどね。でも送料5000円以上するので、もったいない。まあ、旅行にこれだけお金使える人ならどうってことないか。しかし、なんだったんだろう、いったい?
私はそんなに旅行してるわけじゃないが、旅行先でのトラブルと言ったら、せいぜい風邪引いたぐらいなのに、中には「もう海外はこりごり」みたいな経験して帰ってくる人もいるし、なんでかなー。これまでは日本人が海外でトラブる最大の原因は言葉だと思っていたが、Sergeは同じスペイン語を話す相手のせいでこういうことになったわけだし。なんかようわからん。とにかく彼に振りまわされた1週間だった。
ついでだから、今世間を騒がせている、マンションの構造計算書の偽造問題についても。私自身マンション住まいだから人ごととは思えませんです。ちょうど私がここを買ったころも、欠陥マンションが騒がれてて、ずいぶんみんなに脅されたし。
とか言いながら、私がつい思い浮かべてしまうのは、モンティ・パイソンの「建築家のコント」。公団マンションを作るので、お役所の人間の前で、いろいろな建築家が模型を使ってプレゼンテーションをするのだが、最初に出てきたジョン・クリース扮する建築家は屠殺場作りの専門家で、「住人をいかに効率よく虐殺するか」をとうとうと説明する。こいつは当然ながら追い出される。次に出てきたのはエリック・アイドルが演じる気の弱そうな建築家で、彼が話している最中に模型がグラグラして傾いてくる。必死でそれを直そうとするのだが、しまいには火を噴いて爆発してしまう。すっかり気落ちしたアイドルに、役人たちは「これがいい。なんと言っても建築費が安いし」とニコニコ顔(笑)。これが日本ではお笑いじゃなく現実なわけですね。
そういえば、「マジシャンが一夜で建てた公団マンション」というコントもあった。住人がマジックを信じてる間は立ってるんだけど、ひとりでも疑いを持つとバラバラに崩れてしまうの。
まっ、イギリスじゃ高層マンションなんて人間の住む所じゃないと思われてることを思うと、こういうギャグが出てくるのもうなづける。
そうそう、マンションというのは不動産業者が作った和製英語ですから注意。ある大学の先生は、外国人教授に、「今度、家族連れで日本に1年間在外研究に行くから、その間、きみのマンションに住ませてほしい。寝室を4つ用意してくれ」と言われてあせったそうな。もちろん、英語でmansionと言えば、寝室が50も60もあって、住み込みの使用人が何10人もいるような超豪邸のことなので、そういう所に住んでると思われたわけ。億ションだろうとなんだろうと、アパートはアパートなのにね。
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